Gustav Holst – グスタフ・ホルスト

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吹奏楽のための第一組曲

  • ●原題:First Suite in E♭ for Military Band
  • ●グレード:4
  • ●演奏時間:約10分30秒
  • ●第27回サマーコンサート

イギリスの作曲家、グスターヴ・ホルスト(1874~1934)の1909年の作。いわゆる「吹奏楽」という編成のために書かれた世界初の曲であるといわれている。吹奏楽というものを少しでもかじったことのある方ならば、一度は聞いたことがあるのではないだろうか。

楽譜自体は、確かに簡単ではあるが、やはりとても深く、難しい曲である。ただ一つの主題によって書き上げられているが、飽きさせない。これが作曲家のなす技であろう。

この組曲は、3つの楽章からなる。

第1楽章 シャコンヌ

シャコンヌとは、3拍子の舞曲のことである。冒頭では金管低音部による主題の提示があり、この主題が組曲全体を支配する。全部で15の変奏がある。

第2楽章 インテルメッツォ(間奏曲)

オーボエ、クラリネット、ミュート付きコルネットが、主題の変奏を演奏する。

第3楽章 マーチ

金管セクションでの華々しい強奏で始まり、木管セクションの優しい旋律を経て、終結へと向かっていく。

(第27回サマーコンサート)

組曲『惑星』

  • ●原題:The Planets
  • ●グレード:5
  • ●演奏時間:約50分
  • ●第46回定期演奏会

組曲『惑星』は、1914-1916年にイギリスの作曲家グスターヴ・ホルストによって作曲された、近代では代表的な管弦楽曲の一つである。この曲は全部で7楽章からなり、それぞれに作曲当時太陽系の惑星として知られていた惑星の名がつけられている。

作曲者ホルストは、この曲を天文学ではなく、当時関心を持っていた占星術に着想を得て作曲したため、惑星の名には地球が含まれない。各楽章には惑星の名の他に、占星術の礎となっているローマ神話の神々を表す副題がつけられている。

I. Mars, the Bringer of War:火星~戦争をもたらす者~

気概や情熱、闘争心を人に与え、戦争をもたらすといわれる軍神マルスをイメージして作られた。この楽章全体を通して「ダダダダン、ダン、ダダ、ダン」という5/4拍子の力強いリズムが様々な楽器によって執拗に繰り返され、この特徴あるリズムを背景に性格の異なる三つの主題が展開される。金管を中心としており、戦を予感させるような勇敢さを持った楽章である。

II. Venus, the Bringer of Peace:金星~平和をもたらす者~

愛と美の女神ヴィーナスの名を体現するかのように、火星とは打って変わって静穏でやすらぎに満ちた楽章。組曲全体で見ると、最初の「緩」の部分を担う。柔らかなホルンのソロから始まり、木管を中心とした主題へと受け継がれていく。まるで森の中にある澄んだ湖の辺にいるかのような、美しい旋律をお楽しみいただきたい。

III. Mercury, the Winged Messenger:水星~翼のある使者~

最も太陽に近く公転周期が短い水星は、天空の使者、使いの神マーキュリーが空を翼で駆け巡るかのような印象を与える星である。その印象の通り、この楽章全体を通してヴィヴァーチェで軽やかに演奏されるスケルツォ楽章である。木管を中心とした演奏は楽器間の受け渡しや掛け合いが細かく、バンドとしての腕が試される。複調や、6/8拍子と3/4拍子が混在するようなリズムが、ホルストの作曲家としての技術の高さを物語る。

IV. Jupiter, the Bringer of Jollity:木星~快楽をもたらす者~

この楽章は組曲『惑星』の中で最もスケールが大きく、国民的な行事や宗教的な祝典のような、儀式的な喜びが表現されている。曲は大きく分けて3部で構成されている。第一部では木管の小刻みなパッセージを伴奏にした金管の勇壮な主題や民族舞曲を髣髴とさせるような3拍子が演奏され、第二部へと繋がる。第二部では曲中で最もよく知られた主題が整然と、しかしどこか感傷的に、荘厳に奏でられる。そして第三部では上記の主題が転調を交えて再現され、力強いフォルティシモで曲は劇的に幕を閉じる。

V. Saturn, the Bringer of Old Age:土星~老いをもたらす者~

ホルスト自身が最も気に入っていたというこの曲は、老年の経験と充実を表す。ほとんどがゆったりとしたテンポで演奏され、フルートが奏でる暗い和音に乗って低音楽器が老いを表現するようなパッセージを奏でた後、主題はトロンボーンセクションを皮切りとして金管中心の堂々とした主題へと移り変わり、曲中最高の盛り上がりを見せる。その後は冒頭が再現され、木管楽器とホルンによって厚みを増した音楽は静かに終わりを迎える。

VI. Uranus, the Magician:天王星~魔術師~

『惑星』作曲当時まだなじみが薄かった天王星には、神秘を表す「魔術師」の副題が与えられた。ホルストは他との差別化を図り、この曲にフランスの作曲家ポール=デュカスの交響詩『魔法使いの弟子』の要素を取り入れたと言われている。冒頭に奏でられる印象的な4つの音(G,Es,A,H)は、冒頭以外にも曲全体で様々な形で取り入れられおり、この4音の音名をドイツ語読みすると、ホルスト自身の名前となる(GuEs[=S]tAv Holst)。

VII. Neptune, the Mystic:海王星~神秘主義者~

神秘を象徴する海王星を表現するために、この曲は終始ピアニシモ以下で演奏される。始めは神秘的な旋律がフルートによって演奏され、その後宇宙の広がりを感じさせるような幻想的なアルペッジョへと移り変わり、それに乗って微かにソプラノ2部、アルト1部の2群編成からなる女声6部合唱の透き通った声が聞こえてくる。海王星を他の楽章と差別化しているこの合唱には歌詞がなく、母音唱法が用いられていて、最後には、歌は宇宙の彼方に消え去るように反復されながら、静寂に溶け込むように終わりを迎える。

本日は、特殊楽器の多用や演奏時間の長さを理由に数曲だけを取り出して演奏されがちなこの組曲を、オランダの作曲家Geert Schrijversによる吹奏楽版の編曲で全曲通して演奏します。ホルストの緻密な音楽の世界をどうぞ楽しんでお聴きください。

(第46回定期演奏会)

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