Mark Camphouse – マーク・キャンプハウス

●原題：A Movement for Rosa

●グレード： 5

●演奏時間：約12分

●第23回サマーコンサート

 

1955年12月、アメリカのアラバマ州でキング牧師の指導のもと黒人による公民権運動が始まる。私がこの事件について知ったのは中学2年の英語の授業中であった。現在では英語の教科書のほとんどがアメリカ公民権運動を題材とした文章を取り入れているので、若い世代の人なら何かしらの記憶が残っていることだろう。ところでこの公民権運動の火種となったエピソードを覚えているだろうか。白人に席をゆずれ、というバスの運転手の命令に対し、ノーと答えたひとりの黒人女性。彼女は警官にバスから引きずり降ろされ刑務所に投じられるのであるが、このことに怒りを覚えた黒人たちは団結しバスボイコットを始めたのである。ボイコットは指導者にキング牧師を得、公民権運動は全米に拡大していく。そしてこの席ゆずりを拒否した女性こそ公民権運動の母ローザ・パークス、この曲に冠せられているその人である。

 
この曲は大きく3つの部分に分けられている。第1部はローザの出生から幼年期までを描いている。フルートの独奏が哀愁漂う旋律を歌い上げ、それはアルトサックス、次いで金管群に受け継がれる。一度盛り上がりを見せた後、曲は再び静寂へと向かい、ユーフォニウムがもう一度主題を奏でて第2部へと展開する。第2部は人種差別をめぐる長年の争いと平等な社会を求めたローザの姿が描かれており、不協和音が作り出す不安な雰囲気の中、突然とどろきわたるタムがさらに不安感を高めてゆく。次第に曲は速度を増し、クライマックスへと進んでゆく。再度静まった後に第3部に移ると、ホルンの独奏が聖歌『ウィ・シャル・オーバーカム（我らは勝利する）』を静かに歌い始める。第1部、第2部を通じて断片的に姿を現していたこの歌は、公民権運動の歴史に残る「ワシントン大行進」で参加者全員が行進しながら歌った歌。やがて全楽器群が厳かにこの歌を奏でて、『ローザのための楽章』は幕を閉じる。
M.キャンプハウス1992年の作品。

(第23回サマーコンサート)