『交響曲第2番「江戸の情景」』大人気吹奏楽作曲家のフランコ・チェザリーニってどんな人?【#阪吹ブログ】
今回は、曲紹介記事です。「こんな曲があるんだ~」と会場で初めて知るのも悪くないですが、予備知識があるとより演奏会を楽しめると思います!
そんなわけで、今回は『交響曲第2番「江戸の情景」』について紹介したいと思います。
今年、12月25日に開催される、第50回大阪大学吹奏楽団定期演奏会の第2部で演奏予定です。演奏会についてはこちら
2016年、作曲者のフランコチェザリーニが日本に初来日したのをきっかけに作曲されたという本曲。
今回の記事では
- 作曲者のフランコ・チェザリーニについて
- 江戸は江戸でも江戸のどこ?
の2点をメインに具体的に深掘りしていきたいと思います!
フランコ・チェザリーニについて
まずは、作曲者フランコ・チェザリーニについておさらいします。
フランコ・チェザリーニの人物像とは?
フランコ・チェザリーニは南スイス出身の作曲家です。1961年生まれで現在60歳でいらっしゃいます。
彼の音楽との出会いは幼少期から習っていたピアノ。作曲についても、バルトークの子ども向けの簡単な曲を真似したことが最初だったと言います。10歳からはフルートも習い始め地元の吹奏楽バンドに所属するなど、幅広く音楽に親しんでいたようです。ちなみに、このときの体験が吹奏楽曲の作曲に挑戦したいと思うきっかけになったとか。
このインタビュー動画でも、フランコ・チェザリーニは「様々な音楽活動をしているので、(作曲家ではなく)音楽家と名乗っている。フルーティストでもあり、指揮者でもあり、作曲家でもあるのでその呼び方がベストだ。」と、自分の音楽の仕事に対するこだわりを語っています。
スイス・バーゼルのコンサバトリー(音楽学校)に在学中にはフルートを専攻していたそうですが、同インタビューでは、「ひとつの楽器を学ぶことだけでは、自分の追い求める類いの満足を得られない」と思いたち、作曲も本格的に学び始めたと語っています。バーゼル音楽院では音楽理論や指揮も学んだそうです。
この様々なことに挑戦する姿勢が、チェザリーニが単なる「演奏家」「作曲家」にとどまらず「音楽家」になった所以なのでしょう。
フランコ・チェザリーニの交響曲
そんなフランコ・チェザリーニですが、日本においては特にその吹奏楽曲で大人気です。とくに『アルプスの詩』は吹奏楽界に身を置く者ならば誰しもが知る名曲でしょう。フランコ・チェザリーニの作品は演奏会やコンクール問わず取り上げられ、幅広い人に親しまれています。大阪大学吹奏楽団でも2年前の定期演奏会で『交響曲第1番「アークエンジェルズ」』を演奏しました。演奏会のトリ、感動的なエンディングが印象に残っています。
しかし、チェザリーニが初となる交響曲を発表したのは、意外にも最近になってからです。
その理由を、こちらのインタビュー記事によると、90年代には交響曲に取り組むための材料はそろっていたそうですが、たまにノートを見返す程度で本格的に着手するには至らなかったそうです。しかし2014年に体調を崩し緊急手術。命の危機に瀕したチェザリーニはこのことを契機に、最初の交響曲の作曲に本格的に取り組み完成させたそうです。詳しくは元のインタビュー記事をご参照下さい。
ともかく、チェザリーニの「やり残しが無いようにしたい」という強い思いが伝わってくるエピソードです。また、このような経緯で2016年に作曲された 『交響曲第1番「アークエンジェルズ」』 はチェザリーニの約20年分の活動がつまっているとも言えるでしょうか。あの壮大で輝かしい楽曲にも合点がいきます。
その後、2018年に 『交響曲第2番「江戸の情景」』 、そして今年2021年には 『交響曲第3番「都市の風景」』 が出版され、そのペースにチェザリーニの意気込みが感じられるようです。
さて、長くなってしまいましたが、そんなフランコ・チェザリーニの2作目の交響曲 『交響曲第2番「江戸の情景」』 について見ていきましょう!
江戸のどこの情景?
『交響曲第2番「江戸の情景」』はその副題にもあるように、歌川広重の浮世絵「名所江戸百景」をモチーフに作られた作品です。
その中でも、5枚の浮世絵のタイトルがそのまま楽章の名前になっており、全5楽章、演奏時間およそ43分の大曲になっています。
それでは、どんな浮世絵がモチーフになっているのでしょうか?
見てましょう!はい、どん!
左上から順に、1~5楽章の浮世絵です。僕の独断と偏見でピックアップしてご紹介します。
Ⅱ. 市中繁栄七夕祭(しちゅうはんえい たなばたまつり)
その名の通り、7月7日の七夕をイメージした作品。江戸の町では七夕の前日から竹を立てる風習があったそうで、絵はその様子を表現しています。当時は今の東京では絶対に見ることができないような情景が広がっていたと思うと不思議です。町中に竹を売る声が響いたといいます。
曲の冒頭は何かが始まるようなわくわくしたような印象も有り、町が浮き足立っている様子が想像できますね。途中トロンボーンなどのリズムが印象的なゆったりとした部分は七夕飾りが風になびいている様子を表現しているのでしょうか。そして曲は再び盛り上がります。
七夕の江戸の情景を想像してお楽しみ下さい。
Ⅲ. 日暮里寺院の林泉
美しい庭園を持つ寺院が道を挟んで連なっていたという、日暮里の道灌山の情景が描かれています。
曲全体の中で最も静かで美しい楽章です。
寺院が集まる場所ならではの神秘的な雰囲気を感じます。
感動的な中盤に大注目です。
曲全体を通して、「和」風な音階の旋律が使われており、前後半に奏される賑やかな旋律は、とくに日本人なら小躍りするような楽しげな雰囲気もあります。
スイスで生まれ育ったチェザリーニがこれだけ「和」に寄せた、なおかつ交響曲としても素晴らしい作品を作り上げたことに、純粋に驚いてしまいますね。
「定期演奏会で聞くのが待ちきれない!」という方は、演奏動画をはりつけておきますので、ぜひ聞いてみて下さい!
終わりに
実はこの記事を書いている本人は演奏には参加していないのですが、「江戸の情景」を担当している団員たちは熱心に練習に取り組んでいます!
12月25日はぜひ大阪大学吹奏楽団の定期演奏会にお越し下さい!
よろしくお願いいたします。